ジョリーのばね秤による表面張力の測定


簡単な説明

別名「吊環法」,「リング法」とも言う。この実験は感度のよいばね秤を用いる方法で,多少の熟練を必要とするが実際に水の膜の切れる様子が観察できる,実験者が表面張力を実感し易いものである。大阪教育大学の学生実験として用いられている。


下にその実験装置である「ジョリーのばね秤」を載せた。

実験装置

ジョリーのばね秤,シャーレ,分銅,ノギス,マイクロメーター,温度計,液 体

実験方法

ばねに吊るした金属板のリングを,水面から引き上げることによって表面張力を測定する。リングを水に浸し静かに引き上げていくと,リングに水の膜が吸い付いてくる。そうして,リングをある高さまで上げていくと水の膜が耐え切れなくなって切れてしまう。その時のばねの伸び,水の重さ,膜の長さなどから表面張力を求めるのである。


次に,以上で記した方法を詳しい理論式や図などを用いて説明する。

私たちがする事は,水の表面に対する「仕事」である。つまり,表面張力を測定するために水の表面積を増加させるということなのでる。(この事は, 表面張力を科学しよう を見ればその考え方が解ります。


さらに,私たちが水面に対してする仕事は,表面積の増加に比例している。それは,次の図を見れば解る。


 図1は,表面積がA=lxの水の膜の断面図である。(実際の液体の分子は, このように詰まっていない。分子の間には形を変える事ができるだけの小さな隙 間がある。今回は,形式上このように書いただけである。)
 それを,図2のように方向にdxだけ引き伸ばした。この時,水面がなされた仕事は2dGである。また,それによる表面積の増加は2dAつまり,2ldxになる。ここでの2は,膜の上下の面を意味する。
 さらに,γを単位面積だけ増加させるのに必要なエネルギーの比例定数とすると,

2dG=γ・2dA

となる。よってその単位は,〔J/m〕でありまた, Jは〔N・m〕なのでγの単位は〔N/m〕と書くこともできる。すなわち,γ は単位長さ当たりの力という単位で表わすこともできる。
 図2での,面積の増加は,


となる。

仕事=力×力の動いた距離


と,合わせて考えると,γは,力に対応している事が分かる。このとき,γはlの単位長さ当たり,表面に沿って作用している力,として解釈できる。γを「表面張力(Surface Tension)」と呼ぶ理由はここからきている。


に図3は実験の膜が切れる直前の様子であり,表面張力は鉛直下向きに作用している。
このとき,リングに作用する力は,(質量: 内半径: 外半径:とす る。)

  1. Mg:重力
  2. p0(πr2−πR2):リングの上面にかかる大気圧による力
  3. (p0−ρgh)(πr2−πR2):リングに接している水の膜の圧力による力
    ρは水の密度,は膜の高さを表わす。)
  4. :ばねの力
  5. 2πrγ+2πRγ:表面張力による力

(注)圧力は単位面積当たり,表面張力は単位長さ当たりの力である。

1から5より,リングに働く力のつりあいより


のように書ける。これをγについて解くと



さらに,

とすると,


となり,測定結果が用いることができる。

最後に,表面張力は解ってもらった通り微妙な変化によって影響される。それを考えると,シャーレをアルコールを用いてきれいにするなど,慎重さが必要で ある。

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参考文献

  • 廣川友雄 小倉ー 編:物理学実験,学術図書出版社
  • 吉田卯三郎 武居文助 橘芳實 武居文雄 著:物理学実験,三省堂
  • 福本喜繁 堀三陽 編:物理学実験法,槙書店